主要フィラメント別 ノズル温度チャート
どのフィラメントにも、焦がさずきれいに流れる「窓」があります。それより低ければ、もろくスカスカのプリントに。高ければ、糸引き、ダマ、甘い角に。ここではその窓を一枚の表にまとめ、プリント開始後に範囲内でどう動かすかも解説します。
チャート
| 素材 | ノズル (C) | ベッド (C) | ファン | チャンバー | 乾燥 (C) |
|---|---|---|---|---|---|
| PLA | 190-220 | 50-60 | 100% | 不要、開ける | 45 / 6時間 |
| PLA+ / タフPLA | 205-230 | 55-65 | 100% | 不要 | 45 / 6時間 |
| PETG | 230-250 | 70-85 | 30-50% | 任意 | 65 / 6時間 |
| ABS | 230-250 | 95-110 | 0-20% | 必要 | 65 / 4時間 |
| ASA | 235-255 | 95-110 | 0-20% | 必要 | 65 / 4時間 |
| TPU (95A) | 220-240 | 40-60 | 30-60% | 不要 | 50 / 6時間 |
| ナイロン (PA) | 250-280 | 70-90 | 0-20% | 必要 | 75 / 12時間 |
| PC | 270-310 | 100-120 | 0-10% | 必要 | 80 / 8時間 |
| PVA / BVOH | 190-215 | 50-60 | 50% | 不要 | 45 / 8時間 |
| HIPS | 230-245 | 95-110 | 0-20% | 必要 | 65 / 4時間 |
| PLA-CF / PETG-CF | ベースに +10 | ベース | ベース | ベース | ベース |
カーボンやガラス繊維入りの配合は、おおむねベース素材の温度+10C程度でプリントし、焼入れ鋼またはルビーのノズルが必要です。真鍮ならスプール1本で目に見えて摩耗します。
この表の読み方
まず範囲の真ん中から始め、実際のものを刷り、解決したい問題に向かって5C刻みで動かします。範囲があるのは、メーカー・色・ノズル径・速度のすべてが適正値を動かすからです。そして手元のスプールのラベルは、つねにこの表に勝ります。
数字を入力する前に知っておくべき、2つの明確な上限があります。
- PTFEライナー式ホットエンドは240-250C付近が限界です。それを超えるとライナーが劣化してガスを出します。ABS、ASA、ナイロン、PCを使うならオールメタルのホットエンドが必要です。
- ベッド面にも限界があります。多くのPEIシートは110Cまで問題ありませんが、粘着シート式はそれ以上で剥がれ始めることがあります。
1層目のオフセット
数字を変える価値があるのは1層目だけです。
- ノズル: 他の層より +5C。+10Cを超えると、底が外側に広がるエレファントフットが出ます。
- ベッド: ほとんどの素材で他の層と同じ。ABSとASAは5-10C高めにすると、パーツが積み上がる間も1層目が動きにくくなります。
- ファン: 最初の1〜2層は停止。素材を問わず例外なし。
- 速度: 20-25 mm/s。
素材別の冷却
冷却は温度の話の半分を占めますが、いちばん間違った値のまま放置されやすい設定でもあります。
- PLA はファンを出せるだけ出したい素材です。速く固まり、ディテールを保ちます。
- PETG は30-50%。全開だとPETGの層が割れ、無風だと糸を引いてオーバーハングがすべて丸くなります。
- ABSとASA はほとんど不要。急冷で反りと層間剥離が起きます。チャンバーを求めるのも同じ理由です。
- TPU は中間で30-60%。強い冷却より、ゆっくりしたトラベルを好みます。
- ナイロンとPC は基本的に冷却なし、加えて暖かいチャンバーが必要です。
症状から直す
| 見えている症状 | 動かす | 理由 |
|---|---|---|
| 層が割れる・剥がれる | ノズル +5-10 C | 層を溶着させる熱が足りない |
| 上面が薄くスカスカ | ノズル +5 C、流量を確認 | 吐出不足 |
| 糸引き・クモの巣 | ノズル -5-10 C、乾燥させる | 流れすぎてトラベル中に垂れる |
| 始点・終点のダマ | ノズル -5 C、リトラクション調整 | 停止時に圧が逃げている |
| オーバーハングが垂れる | ノズル -5 C、ファンを強く | 樹脂が固まるのが間に合わない |
| 角がベッドから浮く | ベッド +5 C、ブリムを追加 | 定着不足か収縮 |
| 底が外側に膨らむ | ベッド -5 C、1層目 -5 C | エレファントフット |
| エクストルーダーがカチカチ鳴る | ノズル +5 C、速度を落とす | ホットエンドが溶かしきれていない |
変えるのは一度に1つだけ、同じテストを刷り直してください。同時に2つ変えても、どちらが効いたのかは分かりません。
速度とノズル径がすべてを動かす
この表は0.4mmノズル・中程度の速度が前提です。ホットエンドが実際に気にしているのは、1秒あたりの体積流量(mm³/s)です。つまり流量を上げる要因はすべて、必要な温度も押し上げます。
- 0.6mmノズルを同じ速度で使うと、流量はおよそ倍:5-10C足してください。
- 200 mm/s超の高速プロファイルは、60 mm/sのプロファイルより15-25C高めに。
- 高流量ホットエンドは溶融が速いので、加算不要な場合もあります。
先月まで問題なく刷れていたスプールが、新しい高速プロファイルで吐出不足になったなら、原因はフィラメントではありません。ホットエンドを追い越したのです。
乾燥温度はプリント温度ではありません
上の表の乾燥温度は、どのプリント温度よりも意図的に大幅に低く設定してあります。乾燥は固体のフィラメントから水分を追い出す工程なので、フィラメントは固体のままでなければなりません。ガラス転移点を超えると、ロールが一塊に融着します。
PETG、ナイロン、TPU、PCは水分の吸収が速く、乾燥は救済措置ではなく日常のメンテナンスです。PLAはより寛容ですが、無縁ではありません。
うまくいった設定を記録する
表は出発点をくれますが、再現性をくれるのはあなたの記録です。ノズル・ベッド・ファンを、素材名だけでなく実際のスプールに紐づけて残してください。同じ素材でもメーカーが違えば数字は食い違います。Gyroidはその設定をプリントごと・スプールごとに保存するので、フィラメントと一緒に数字も戻ってきます。